【伝統工芸の基礎知識】漆・漆器

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漆器というものは木でできた器に漆を塗ることによって作成されるものです。英語で日本の漆器は”Japan,” そして中国の漆器は”China”と呼ばれています。

漆は簡単に言うと塗料のようなものです。現在、日本に流通している漆の95%が中国産、2%がペトナム産。日本で生産される漆はたったの2%にしか過ぎないのです。その主な生産地は岩手県や京都府です。

漆の原型は木です。漆の木という木があります。その木を”掻く”ことによって白い樹液が木から出てきます。これが漆の最初の姿です。この樹液は年間に1本の木から200ccしか出てきません。それゆえに漆には希少価値があるのです。

【漆が精製されるまで】

①木から抽出した漆を専用の機械に入れます。機械でよく混ぜ、そしてよく回す。これは漆の成分を均一にするための作業です。

②機械でよく混ぜた漆を加熱し、水分を蒸発させます。このプロセスを踏ませることにより、漆はより透明感を増します。

③不純物を除き、綿を漆の中へ入れます。

④綿を含ませた漆を他の機械へ移します。そこで二つを分けます。綿から漆がにじみ出てきます。

⑤漆をよく混ぜたら終了です。

【漆器ができるまで】

①木地を作ります。漆器を制作するうえでのベストな木材はケヤキだと言われています。ケヤキは硬直で水に強いからです。

木地を強くするために1年以上乾燥させます。その後、丸いお椀の形になるまで何度も削ります。よく削ったあとの木地は透けるほど薄くなります。

②湿気から木地と漆を守るためにブラシや小さな布を使って漆を木地全体に塗ります。

③液体状の漆を細く切ったもめんの布に含ませ、それらを木地に貼っていく。木地は薄くいのでこれを貼ることによって木地を補強します。

④珪藻土と呼ばれる土と漆を混ぜて、「地の粉」と呼ばれる漆を作ります。地の粉を木地に塗ることによってもまた木地が補強され、変形しにくくなります。

⑤次の工程は「中塗り」です。このときに使う漆は、水分を抜き、酸化させ、黒く変色したものです。中塗りは次に塗る漆がよく馴染めるようにするために行われるために「中塗り」と呼ばれます。

⑥次は漆を乾かす作業です。漆が乾くためにはそのための環境を整えなくてはいけません。湿度はおよそ80%で、温度は25〜30℃のやや高温多湿に設定してある棚に漆器を入れます。

⑦漆器が乾いたら、水に溶かした炭で漆器を研ぎます。研ぎ、乾かし、研ぐの作業を繰り返します。

⑧そして「上塗り」をします。漆器の表面の不純物を取り除きながら、最高級の漆を塗っていきます。

⑨上塗りが終了したら、再度湿度が高い棚に上塗りした漆器を入れます。漆器を回転させながら乾かしていきます。

10. 最後に図柄を描きます。ノミ削りながら図柄を描き、出来た溝に漆を染み込ませます。最後に漆を染み込ませた溝に金箔をまぶしたら完成です。

こうして漆器は完成します。

現在は漆器の職人は減少の一途をたどっています。特に漆掻きの職人は日本全国に60人程度しかいないと言われており、後継者の育成が急がれております。そうした問題を解決するべくNPO団体が漆掻きや漆器作成のワークショップを開いており、今後の展開に期待ですね。