[イベントレポート]インターネット×伝統工芸の可能性について in 宇都宮

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伝統サポーターズは2015年6月20日、東京以外の地域では初めてとなるイベントを、シェアスペース「HOTTAN」を運営する株式会社マチヅクリ・ラボラトリー(栃木県宇都宮市)と共催しました。

宇都宮のシェアスペー「HOTTAN」にて
宇都宮のシェアスペー「HOTTAN」にて

 

地元の職人・団体・行政・起業家・メディアが集まる場に

イベントのテーマは「“インターネット” × “伝統工芸”の可能性について〜栃木県の伝統的な手仕事を未来に残すために、私たちが今できること〜」。伝統サポーターズに登録する栃木県の作り手を招き、地元団体の協力で行いました。
参加者には栃木県庁の職人・作り手、栃木県内の起業家・フリーランスのほか、地元メディアの取材も入り、20名ほどで熱い議論を交わしました。

黒崎さん、佐川さんの作品も会場に展示
黒崎さん、佐川さんの作品も会場に展示

まずは株式会社マチヅクリ・ラボラトリー代表の村瀬正尊(むらせ・まさたか)さんが司会・ファシリテーターとして、伝統サポーターズのプロデューサー桜井からサービスの立ち上げ背景や、サービス紹介、登録している職人・作り手とサポーターが実際につながり、どのようなことが起きているのか事例紹介をしました。

株式会社マチヅクリ・ラボラトリー代表の村瀬正尊さん(左)
株式会社マチヅクリ・ラボラトリー代表の村瀬正尊さん(左)

もともと桜井自身は伝統文化が大好きで、三味線や茶道の経験があるものの、今や三味線を修理してくれる職人が廃業してしまい、このままでは伝統技術の継承ができない。また10年間記者として、編集者として職人や地域への取材を通してこのままでは作り手がどんどん減っていくことに危機感を持っていました。

そこでこの素晴らしい伝統文化を残していきたいと考えて、インターネットやソーシャルメディアを活用するサービスを考えました。職人・作り手とコアなファンをつなぐことを目的とした伝統サポーターズを開始したのです。こちらのスライドシェアに当日の資料を公開しています。

続いて、栃木県伝統工芸士であるクロサキ工芸の黒崎啓弘さんによる、インターネットを活用した事例紹介。
黒崎さんは自社のホームページを持たれているものの、始めはあまりアクセス数が少なかったといいます。伝統サポーターズに登録し更新頻度を上げ、自社ページへ被リンクすることで、SEO効果が出始めたそうです。アクセス数や問い合わせが増えてきた、と体験を語ってくれました。

黒崎さんのように既にホームページを開設している職人・作り手も、伝統サポーターズに新たに登録することで相乗効果を生み、自身の職人・作り手紹介ページの検索結果が上位に表示されるようになっていきます。

栃木県伝統工芸士で指物師の黒崎啓弘さん。
栃木県伝統工芸士で指物師の黒崎啓弘さん。

一方、栃木県大田原市の竹工芸作家・佐川さんのインターネット活用は、ECサイトの「base」。こちらで商品を販売されており、まだ毎月安定的な売上はないものの、自分の作品を展示したり在庫確認の整理をする場として活用されています。写真も非常に綺麗ですが、全て自分で撮影されているそうです。

大田原市出身の竹工芸家、佐川岳彦さん。
大田原市出身の竹工芸家、佐川岳彦さん。
一方で、佐川さんはインターネットの活用において疑問も投げかけました。
作品制作の技術がまだまだであっても、マーケティングが上手な人が注目されるという点。また、実際に作品に触れなくても、文章や写真だけで判断されてしまうという点を挙げていました。
誤った情報発信をしないことを心掛け、できるだけ誰が見ても誤解のないように、写真掲載を中心に慎重に発信されているとのことです。

人間国宝が2人もいる大田原市、県内でもあまり知られていない

佐川さんより大田原市は竹工芸が盛んで、人間国宝が2人もいるという話をされた際、参加者からは地元・栃木のことなのに知らなかったという驚きの声が上がりました。県内でも知っている人は限られており、身近な存在でないと知る機会が少ないようです。
参加者の中には、何十年も前に黒崎さんとお付き合いがあった方の参加もあり、このイベントを広告で知って、地元の職人・作り手を支援したいとサポーターになったと話していました。
今回のイベントには栃木県内の住人に絞って広告配信をしたからこそ、実際にオフラインでつながることが体験できた好例だっと思います。
懇親会の様子。宇都宮の餃子をつまみながらビールも片手に。
懇親会の様子。宇都宮の餃子をつまみながらビールも片手に。
私たちが今できることの一つに、応援している職人・作り手や好きな伝統産業があれば、それをソーシャルメディアやブログなどで発信するだけで、新たな出会いやつながりを作ることにつながります。最後はそんな話をしながら、Q&Aや懇親会も大盛況でした。