沖縄の伝統工芸“紅型(びんがた)染”の姉妹職人、日用品アレンジで新境地拓く

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山城祥子(やましろ・しょうこ/姉)、吉濱愛(よしはま・あい/妹)/紅型染職人

沖縄県浦添市の紅型工房「城紅型染工房」の職人姉妹。山城さんがオリジナル商品の企画やデザイン、縫製を担当し、吉濱さんが特注品のデザイン、ストールの制作などを担当している。
工房は、母親が立ち上げ、2016年で45周年を迎えた。
※写真左が姉の山城祥子さん、右が妹の吉濱愛さん。

▼城紅型染工房ブログ
http://gusukubingata.ti-da.net/
http://gusukubingata.ti-da.net/e8084273.html(染め体験の詳細)


沖縄には「紅型(びんがた)染」という染色の伝統工芸があります。
約500年の歴史を持つ染色方法で、琉球王家や氏族、諸外国の王家など多くの人々を魅了し、婦人の礼装や神事での服装として使われていました。南国その紅型を特有の美しい染物が特長で、貿易でも貴重な品物として扱われていました。

その紅型染を現代風にアレンジし、新しい発想で生活に密着した商品を次々と作り出している“職人姉妹”が沖縄県浦添市にいます。紅型工房「城(ぐすく)紅型染工房」の山城祥子さん(姉)と吉濱愛さん(妹)にお話を聞きました。

 

糠ともち米、塩を混ぜた防染糊に染料 10色以上を用いて鮮やかに

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紅型(びんがた)とは、沖縄の伝統的な染めものです。
“紅”は色彩、”型”は文様を意味しているといわれます。15世紀から19世紀まで沖縄を支配した琉球王国で盛んになり、王族の着物や踊りの衣装、庶民の晴れ着などに使用されていたといわれています。

文様を描くには、布に、糠(ぬか)ともち米、塩を混ぜて作った防染糊を置き、筆で染料をしみこませていきます。10色から12色を使うのが一般的です。

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新商品製作に行き詰まることも 姉妹だから気軽に相談し合える

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小さいころは紅型に興味はあまりなかったのですが、絵を描いたりするのは好きでした。
2人とも、成長するにつれてだんだんと紅型に興味を持つようになり、私は東京の女子美術大学短期大学で服飾やデザインと美術を勉強。妹は制作デザイン科のある県内の高校を卒業してから京都芸術短期大学で染色を習いました。

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工房では、それぞれ学んだことを生かして活動しています。
姉はオリジナル商品の企画やデザイン、縫製を担当。私は、特注品のデザインやストールの制作をしています。

新しいものを作るときは悩むこともありますが、お互い気軽にアドバイスを求め合っています。こういうとき、姉妹そろって工房にいて良かったなと思います。

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紅型の伝統的なモチーフは、牡丹や鳥といった自然。でも、私たちは干支やひな人形などの季節の柄を取り入れています。

さらに着物だけではなく、お財布や携帯のケース、日傘の染色にも挑戦。新しい感覚を持ち込み、紅型がもっと生活に寄り添い、身近に感じてもらえるように工夫しています。

私たちが子育てをするようになってからは、子ども用品も制作することが多くなりました。
今後も積極的にオリジナル商品を企画して、多くの方に親しまれる紅型を生み出していきたいです。

 

フリーハンドで文様描く“筒書き”スタイル 大胆な表現が魅力

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紅型には、「型染め」と「筒書き」の2つの手法があります。城紅型染工房では、筒書きをメインに制作しています。

2つの手法の違いは、糊を置く方法です。
型染めでは、布に文様が切り抜かれた型紙を置き、上から糊を塗っていきます。

私たちは、パソコンで型紙の文様をつくっています。 筒書きでは、糊を入れた筒を絞り出しながらフリーハンドで文様を描いていきます。そのときにしか表現できない大胆さが出るのが、筒書きの魅力です。

制作期間は、型紙づくりから始めると大体1か月半~2か月、筒書きだと1か月。糊が乾くのが遅くなるほど、完成が遅くなります。

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紅型作品でプロポーズ大作戦! お客様の要望を実現できる嬉しさ

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お客様からの要望をヒアリングし、特注品も作っています。 たとえば「紅型でプロポーズしたい」という受注を男性からいただいたことがあります。タペストリーに家紋やお花を入れて欲しい、というご希望にお応えしました。その後、お客様から「プロポーズが成功した!」というご連絡をいただいたときには、とても嬉しかったですね。

また、予約制で紅型の染め体験も実施しています(※日曜日以外での実施)。
地元の方や観光客の方、5歳くらいのお子さんとの家族連れや年配の方のグループなど、老若男女たくさんの方が来てくださいます。

今まで紅型のことをご存知だった方でも、実際に体験することで、その魅力に改めて気付いてくださる方もいらっしゃるんですよ。体験でしか味わえない新しい発見をしてもらえると、ありがたく感じます。

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最近では、機械でプリントした物も流通するようになっていますが、体験教室や私たちの作品を通して、手染めの紅型の良さをたくさんの人に伝えたいと思っています。 10年後には、沖縄を代表するファブリックとして、日本のみならず海外にも進出したいです。