伝統産業振興の“かけ橋”となった恩人のご逝去の報にふれて

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伝統サポーターズの運営会社・株式会社ガイアックスは2015年12月24日、秋田県五城目町と「伝統産業の職人支援協定」を締結しました。

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正式にサービスがスタートして1年足らずの東京のベンチャー企業が、地方自治体と協定を結ぶに至ったことは、大きな成果。この協定を実現した多大な功労者が優しく見守る中、五城目町町長らと記者会見に臨みました。
しかしながら、4月19日の朝、残念なお知らせが届きました。“かけ橋”になってくださった商工振興課・松橋美晶氏が亡くなったとの報。享年58歳。これから!という若さで、大変無念であったと思います。きょうは松橋さんとの思い出を振り返りながら、彼の功績と地方の伝統産業の現状について触れます。


五城目町は職人の町 かつてのにぎわいをまた取り戻すために

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わたしが初めて五城目町を訪れたのは、2015年5月22日。

東京駅6時15分の新幹線こまち1号に乗車し、10時24分に秋田駅に到着すると、同町地域おこし協力隊の柳澤龍氏に迎えられ、五城目町へ。

秋田駅から自動車で約1時間。商工振興課の金子課長と伝統工芸振興を担当されている松橋さんと初対面しました。五城目町の伝統工芸の現状と取り組みを教えていただき、町役場を後に。しかし、松橋さんが「町内の工芸士を紹介します」と運転手役を買っていただき、わたしたちを同乗して町中の工房を案内してくれました。

伝統サポーターズで掲載している3名の職人さんと知り合ったのも、この時です。

登り窯を使い、地元産・自然素材にこだわった陶器を製作している工房“三温窯”の佐藤秀樹さん
伝統的な建具技術を駆使し、秋田杉を用いた組子コースターづくりにも挑戦している建具職人の小玉順一さん
そして、3代続けて木工関連の事業を営み、柔らかなデザインで人気の“お盆”などを製作する木工職人の佐藤友亮さんです。

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佐藤秀樹さんの“三温窯”の登り窯

職人さん一人一人と1時間程お話をする機会を得て、工房内を見学させていただきました。

よく知らない東京の人間が足を踏み入れても、大概最初の顔合わせでは警戒されて終わってしまうものですが、松橋さんが同行してくれたことで、どの工房でも笑顔で迎え入れてもらうことができました。結局、日が暮れるまで付き合っていただいたのでした。

工房巡りの車内で松橋さんは、「五城目町にも伝統工芸の職人がたくさんいたけれど、今はほとんどいなくなってしまった。樽や桶の職人さんなど、既に町内では途絶えてしまった工芸も少なくない」と説明してくれました。

「五城目町はもともと職人の町。500年以上続く県内でも古い伝統ある“朝市”というのがある」と、松橋さんは伝統サポーターズを通して五城目の職人さん情報が広く発信され、五城目町産の新たな作品が町内外に広がり、技術が継承されていくことに期待を寄せていました。

翌6月にも町を訪れました。
わたしたちが五城目町に貢献できることとして、町役場の職員の皆さんと物産協会や前回顔合わせした工芸士の皆さんを対象に、Webマーケティング講座を開催。Facebookなどソーシャルメディアを活用することで、町外や県外の顧客を開拓するための情報発信ノウハウについて講演しました。

 

松橋さんの想いを引き継いで 皆に伝えたい五城目町の魅力

その後も何度も交流を重ね、東京ー秋田の長距離間での打ち合わせ手段として、Skype(ビデオ・音声メッセージアプリケーション)での会議も行いました。

伝統サポーターズに掲載する職人さんの選定、取材方法、紹介したい内容、サポーター募集告知などを話し合い、いよいよ10月に公開となったのです。

公開準備が整った初秋、松橋さんに町内の伝統産業を統括する物産協会での会合の場で、プレゼンテーションを設定いただきました。このプレゼンテーションに臨んだことで、町内関係者の正式合意を得ることができ、町役場と連携した運営が実現できました。

掲載公開に至るまで、半年かかりました。
しかし、何度もお伝えするように、よく知らない東京のベンチャー企業へ町が全面協力をしてくれることは、そう簡単な話ではありません。五城目町の皆さんの温かさもさることながら、松橋さんがこの事業へ多大なる想いで取り組んでいただいたからこそ実現できたのです。

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松橋さん

松橋さんが半年程前から体調を崩されていたということを、後に関係者の話で知ることになったのですが、一緒に仕事をしている間は一切顔にも態度にも出されることはありませんでした。少なくともわたしには、そう感じられました。
死因は癌。病気と闘い入退院を繰り返しながらも、町と民間企業の間に入って動いてくれたのです。

協定締結から3か月。ベンチャー企業のスタートアップの洗礼を受けて(事業主として非常に心苦しく申し訳ない思いでいっぱいですが)、サポーター登録システムの停止に伴い、いくつかの事業内容を転換せざるをえない状況になりました。しかし、これから新生する気持ちで前を向き、当初の目的をもう一度思い起こし、松橋さんの分も職人支援・技術継承のミッションを遂げたいと思っています。

さて、初夏には秋田県五城目町の職人さんのサポーターを対象に、お礼の特典である「町内工房体験ツアー」を実施します。松橋さんと一緒に巡ったあの日を思い出しながら、五城目町の手仕事の魅力を多くの人に知ってもらうため、松橋さんの言葉を参加者一人一人に伝えていきたいです。

五城目町との地域プロジェクトでは、引き続きサポーター登録希望者を募集しています。
ご希望の方は、下記のいずれかまでご連絡ください。

★伝サポ事務局
info@den-suppo.jp

★五城目町物産協会(五城目町役場商工振興課内)
syoko@town.gojome.akita.jp
電話:018-852-5222

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