伝統サポーターと体験工房!東京都心で木彫刻師・茶道具作家に学ぶ“木”との交流

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伝統サポーターズの活動プロジェクトを支援してくれている伝統サポーターの特典(お礼の品)として5月1日、東京・大田区の木彫刻師で茶道具作家としても活躍されている“まえさん”こと、前島秀光さんの工房に伺い、木彫り体験を行いました。体験の様子をレポートします。

▼“まえさん”こと前島秀光(まえしま・しゅうこう)さん

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1949年生まれ。桑沢デザイン研究所卒業。前島木彫所、四代目継承。 江戸木彫伝統工芸士。木彩会会員。巧匠会会員。建築彫刻だけではなく、茶道具やオブジェをはじめとした、お客さんに必要とされる作品をつくる。また体験教室を通じて、ものづくりの奥深さ、魅力を伝えるための活動に尽力している。


東京・大田区の閑静な住宅街にある前島さんの工房は、東急池上線「千鳥町」駅から徒歩2分に位置します。玄関を入ると茶室があり、工房は地下。階段を降りると、木の香りとともに、たくさんの道具に囲まれた木の部屋が広がっていました。

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最初に前島さん(写真下)から「木の話」があり、材料と道具の種類を解説してもらいました。

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今回体験に参加したのは2名。1名は、ノミと玄翁(げんのう)で角皿を彫り、もう1名は豆かんなで削るカッターの柄づくりに挑戦しました。

角皿で使う木材は、栗の木(写真下)。栗は水に強く、明治時代は鉄道の枕木としても使われていたそうです。角皿づくりは、ノミでたたいて彫り、その後豆かんなで削る作業をします。

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木工の手しごとというと、大工作業を思い出します。男性の手しごと、というイメージが浮かびますが、前島さんいわく「木工体験に興味を持って挑戦しに来るのは、ほとんど女性です」とのこと。ちなみに、今回参加された2名も女性です。

前島さんに用意してもらった、角皿づくり用の道具はこちら(写真下)。さまざまな形のノミやかんながあり、「どの道具をどうやって使えばイメージしている彫りや削りができるか、を自分の頭で考えながら作業すること」と繰り返しお話されていました。

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「ゴン、ゴン、ゴン」というノミと玄翁(げんのう)=大型のかなづちの音が響き渡る中、どんどん木が削られていきます。

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時折、前島さんから細かい指導が入ります。

「木の目の特徴を活かしながら削ろう。逆目(さかめ)で削らないように。同じように削っても、場所や角度によって削り具合が変わる。気をつけないと“パーン”と割れてしまうこともある」

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木の目の特徴を、手取り足取り教えていただきます。

前島さんの軽快なトークと解説を受けながら、黙々と作業に没頭すること2時間。栗の木の角皿の完成です。

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木ロウで磨いてから、はんだごてで、記念のサインも入れてみました。

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一方、カッターの柄づくりには、チーク材を使いました。

豆かんなで美しい曲線美を作って、ひたすら削る作業。前島さんのお手本は(もちろん)簡単そうに見えますが、実際はなかなか難しそう。完成見本を参考に、削り上げました。

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ツヤ出しは、くるみ油を使って仕上げました。市販のくるみを使った“塗り道具”で、丁寧にこすっていきます。

「自宅でもできそう!」と参加者。前島さんも、「ぜひ活用してみて」とアドバイス。

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ラインが美しいカッターナイフ。チークの木目も上品に見えますね。

最後に、前島さんの作品のご紹介。楽しいおしゃべりをしながら、前島さんはこれまで制作した数々の作品を見せてくれました。
なかでも一同が驚いたのは、このひょうたん型の箱。何が入っていると思いますか?紐の結びがヒントかもしれません。

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正解は、茶道具です!

ご家庭で楽しめるようなコンパクトタイプの茶道具が一式収納できる茶箱です。左下の琵琶の形をしたものは、香合です。まさに職人技ですね!

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最近の作品は、「茶道具がメイン」と話す前島さん。完成前の作業中の茶杓もズラリと見せていただきました。

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「お抹茶をすくい上げたとき、客人の目に映る所作の美しさを意識して作っている」と前島さん。ご自身でもかつて茶会を開かれたりしていたそうで、実技を兼ね備えた茶道具作家としてのプロの心意気が、作品に込められていました。

珍しかったのは、クジラのひげで作った茶杓(写真下)。「仕事で使う材料がどんどん手に入らなくなってきている」と嘆きつつ、入手経路は「インターネットが多い」と話します。

「思いもしなかった地域に材料が眠っていることがある」そうで、インターネットを通して結びつきが広がり、素晴らしい作り手とマッチングできたら最高です。

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本日、体験工房でお世話になった前島さんは5月27日〜29日にかけて、長野県松本市で「木彩会展」を開催します。場所は、松本駅東口の「村山人形店」です。

木に触れたい!木が大好き!という方、ぜひ長野に足を伸ばしてみてはいかがですか。