和菓子職人歴20年以上、地元・京都で奥深い“京菓子”の魅力を伝えていく

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池田仁亮(いけだ・じんすけ)/京菓子職人

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大阪府出身、京都府在住。大阪府立少路高等学校卒業後、アパレル関係の会社に就職。22歳のとき、親戚の勧めもあり、和菓子職人の道へ入り、和菓子に魅了される。和菓子専門店「与楽(よらく)」で20年の修行を終え、独立し、2014年3月「和菓子いけだ」を創業。和菓子の可能性を広げるため、日々新しい試みを模索中。


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若いころは服が大好きで、アパレル関係の仕事をしていましたが、縁があって20年前に和菓子職人の道へ入りました。あれから20年がたち、地元京都に念願だった自分の店を持つことができました。

しかし、今の時代、和菓子よりも洋菓子を好む傾向は根強く、和菓子業界をとりまく環境は決して甘くありません。これからの京菓子、はたまた和菓子の未来を守るためにも、多くの新しい試みをして、洋菓子に負けない新商品を開発していきたいです。そして、改めて和菓子の魅力を、日本の方々はもちろんのこと、世界の方々にも再認識させたいと考えています。

 

 

「あんたは食べる仕事が向いている」と親戚に勧められる

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親戚が和菓子屋を経営していたこともあり、小さいころはよく手伝いをしていました。

しかし、そのころの私が抱く和菓子職人のイメージは”カッコ悪い”でした。和菓子職人といえば、かっぽう着に身を包み、地味な作業の繰り返し。野球選手や俳優に憧れる子どもはいるでしょうが、和菓子職人に憧れる子どもなんて、なかなかいません。

私が22歳のころ、アパレル関係の仕事が行き詰まり、どこか不満を抱く日々を送っていました。
そんなとき、和菓子屋を営む親戚が「あんたは食べるほうの仕事が向いとるよ」と言って、とある和菓子屋さんを紹介してくれたのです。

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最初は正直乗り気ではありませんでした。

子どものころのイメージがありましたし、心のどこかで、和菓子職人という仕事をさげすんでいました。

しかし、実際に丁稚奉公(でっちぼうこう)として働き始めると、私の認識は間違いだったと分かったのです。

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和菓子職人のこだわり抜かれた繊細かつ丁寧な仕事と、アートともいえる美しい京菓子をあらためて見たとき、私の持っていたイメージは変わり、こんな”カッコ良い”和菓子職人になりたい!と思ったのです。

 

 

修行期間としては異例中の異例、20年で得た確かなモノ

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私は、京都に広く展開する和菓子専門店「与楽(よらく)」へ、22歳から42歳の20年間を過ごしました。

そのうち、7年は修行期間として丁稚奉公、残りの13年は社員として雇ってもらっていました。

小さいころに親戚の和菓子屋を手伝っていたと言いましたが、それは子どものころの話です。
子どもに任せられる仕事なんてものは、たかが知れています。そのため、ほとんど素人同然で、和菓子の世界へ飛び込んだのです。

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本当に何も知らないことばかりで、専門用語や道具の名前を覚えるところから始めました。

そのなかでも一番難しかったことは、仕込みにおける塩梅(あんばい)、つまり塩加減です。ちょっとした誤差が、味と食感を大きく左右する上、季節やその日の気温によっても微調整が必要となります。

感覚に頼る部分が大きいので、それをつかむまでが大変でした。

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そうして経験を重ねていくうちに、いつしか任せてもらえる仕事も増えてきました。

修行を始めて約7年が過ぎ、ついに社員として採用されたとき「実力が認められたんだ」と感じることができて、とても嬉しかったですね。

修行期間を終えたら、すぐに独立する人が多いなか、私はそこから更に13年間勉強に費やしました。店を持つ準備はもちろんのこと、私自身の技量をさらに高めるため、この時間はとても大切なものとなりました。

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もっと早く独立したいと焦る気持ちもありましたが、今思えば良かったと感じています。

この20年の修行で得た確かな「技術」と「自信」を胸に「和菓子いけだ」は、今日も笑顔で営業しています。

 

 

和菓子の中でも”特別”な京菓子、五感で味わう魅力を世界へ

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和菓子と一言で言っても、地域によってそれぞれ特長があります。

そして京都といえば京菓子。
八橋(やつはし)は代表的な京菓子として、全国的にも有名ですよね。

京菓子の特長の一つとして、五感で味わうといわれています。色や形を目で、食感と味を舌で、香りを鼻で、菓子の銘(名前)を耳で楽しむのです。

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もう一つの魅力として、京菓子は抽象的な存在であるということ。

例えば、もみじの形を再現したお菓子であれば、「秋っぽい」というのは伝わりますよね。

しかし、京菓子はそうした直接的な表現はしません。

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食べる人が菓子の「銘」と京菓子の色合いを見て、想像できるようにしているのです。
そこが京菓子の奥深さでもあり、京菓子ならではの魅力であるといえます。
この感覚は日本人であれば、理解してもらえると思いますが、外国の方には難しいかもしれません。

しかし、外国人の方でも楽しんでいただけるような京菓子を、私は作っていきたいと考えております。