[産地視察]奥会津編み組細工 in 三島

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見渡す限り緑が広がる夏の顔

深い緑の只見川の水面に映る圧倒的迫力で迫る山々。「日本で最も美しい村」連合に加盟している奥会津の福島県三島町は、豪雪地域として知られますが、夏の顔は穏やかで、訪れる人々を優しく包み込んでくれます。

そんな三島町は別名「桐の里」とも呼ばれ、箪笥などの桐で作った木工芸が盛んな地でもあります。
また、豪雪地帯であることから、農家の方々の冬の合間の兼業として、編み組細工工芸が生まれました。

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女性に大人気の山ブドウ細工

人口は1,794人(2015年4月現在)の小さな集落で、交通のアクセスは鉄道か自動車。JR只見線は会津若松駅から小出駅(新潟県魚沼市)を結び、車窓から眼下にあふれる風景はまさに絶景です。

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只見線の鉄道(左)と眼下に広がる自然

前置きが長くなりましたが、三島町の「産地視察」の目的は、地域行政と協力し、伝統的な手仕事の情報発信機会の場を設けること。経済産業省東北経済産業局と福島県庁からの推薦を得て、オフラインミーティング(勉強会)に向けた企画打ち合わせをしました。

伝統サポーターズ事務局は2015年8月21日、福島県観光交流局産品振興戦略課(福島県庁)のご担当者に、開催に向けた産地会場候補や招へいする産地事業者情報を教えていただき、その足で三島町に入りました。

直前の福島県庁での打ち合わせが終わり、13時発の福島駅発高速バスに乗車。会津若松駅経由で現地の会津宮下駅にたどり着いたのが18時20分でした。

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川霧が佇む幻想的な只見川

三島町の役場の方にご紹介いただいた宿から、打ち合わせ先の三島生活工芸館までは2.5キロメートル。
翌22日の午前10時に到着し、板橋館長さまとの打ち合わせを行いました。

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三島生活工芸館

国の指定でもある奥会津編み組細工ですが、現在の伝統工芸士は8名のみ。最も若い工芸士で60歳、平均年齢は70〜80歳とのこと。

都会の女性に大人気で、全国的にも知名度の高い「山ブドウ細工」は、男性の作り手が中心。山ブドウの皮は硬く頑丈で、力仕事を要するからです。

一方、ヒロロ(和名:ミヤマカンスゲ・オクノカンスゲ)を材料とするヒロロ細工は、縄にして作られ、女性の作り手がほとんど。野菜を洗ったり米をといだりするための笊(ざる)として、マタタビ細工(※写真下)も作られています。

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生活必需品であるマタタビ細工

私が訪れたこの日も女性のお客さんが数名来ており、アクセサリーなどの小物やかご(バッグ)を購入していました。

生活工芸館の板橋館長は「東京に出向き、奥会津編み組細工を売りに行くこともPRの一つです。しかし、過疎化の進む三島町の地域活性のためにも、都会の人も含めてもっと多くの方に、この美しい三島の里に直接来てもらいたい。地域の宿に泊まってもらったり散策してもらったり・・・三島の自然と景観を堪能しながら、この生活工芸館に足を運んで、気に入った編み組細工を買って行ってほしい」と話します。

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名物の会津地鶏そば

三島町には年に一度、6月に盛大なお祭りがあります。「ふるさと会津工人まつり」です。

産地の奥会津編み組細工の作り手はもちろんですが、全国から陶器、木工、漆器、染織などさまざまな作り手が結集します。その数150名。このイベントには内外から25,000人の来場者が訪れ、全国の優れた匠の技を見て、その作品・商品を買われていくそうです。

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猫用やぐらのワラ細工

作り手の高齢化が進む三島町ですが、新しい風が吹きました。
この9月より、奥会津編み組細工の後継者候補として、若い女性の地域おこし協力隊が1名移住します。町では初めての取り組みとのことで、来年も再来年も続くようにしていくのが目標です。

伝統サポーターズでも、この若き後継者候補とともに、奥会津編み組細工を盛り上げていきます。
秋には東北地方でベテランの作り手を招いたイベントを開催いたします。こちらでも告知しますので、お楽しみに。


【番外編】三島町の観光案内「宮下温泉」

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窓越しに眺める温泉
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L字型の広い内風呂です

只見川沿いの宮下温泉は、炭酸水素塩泉と硫酸塩の2つの源泉。神経通などに効くといいます。
旅館「栄光館」の温泉(写真上)は、窓越しに季節の風景が望める温泉です。只見川を挟んで向かいにある「ふるさと荘」も姉妹宿で、温泉を行き来できます。

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朝の風景。中央奥に見えるのが栄光館

栄光館とふるさと荘は、右手に見える赤い鉄橋を渡ります。
目前には見渡す限り緑・緑・緑。徒歩5分ほどの距離です。

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ふるさと荘の温泉は扇型

縁起の良さそうな扇型の形をした湯船に、少し濁りのあるお湯が特徴のふるさと荘の湯。
当初は現地の方からこちらの宿を勧められましたが、予約がいっぱいで宿泊できませんでした。夏休み期間ということもあり、家族連れの方が多く、宿泊されていたようです。
夏場は自動車で訪れる観光客が多いと聞きました。