五城目ならではの工芸品開発へ! 新ブランドで木の温もりを家庭に届けたい

LINEで送る
Share on LinkedIn
Pocket

佐藤友亮(さとう・ともあき)/木工職人

秋田県五城目町出身。佐藤木材容器の3代目。地元の五城目町で“木のものづくり”を通し、家庭の中に溶け込む日用使いの新しい商品開発を行っている。五城目ブランドが何世代も使われ、脈々と受け継がれる文化を目指す。


遠回りして分かった“木のものづくり”の魅力

僕は秋田県五城目町に生まれて、高校は秋田工業高校で建築を学びました。五城目は昔から林業の盛んな農山村なので、製材、家具、建具など木工関連の事業者が多い町です。僕の実家も木工関連で、3代目にあたります。おじいさんが林業をやっていました。

「この仕事を継ぐんだ」と小さい頃に騒いでいたのは覚えています。小さい頃から工場で過ごし、木の端っこを使ってよく工作をしていました。それが当たり前の風景だったんです。

でも、高校卒業後は、2歳年上の先輩に憧れたという単純な理由だけで、美容学校に進みました。五城目を離れて仙台での生活が始まったのですが、順風満帆ではなかったです。18歳で椎間板ヘルニアを患って緊急手術。術後も腰の痛みに耐えかねず、美容師の道を断念しました。逆にあきらめがついてスッキリしましたが、当時は将来への不安を感じて落ち込み、引きこもっていましたね。

五城目町に戻ってきて、いくつか職を転々としました。建設会社で働いたこともありました。しかし、何かが違う・・・という違和感が自分の中にあって。面白味を感じなかったんです。ものを作っているのは同じなんですけど、コンクリートじゃなかったんです。土砂崩れを防ぐのり面を作りながら、「この仕事を好きになれるのか?」と自問自答しながら働いていました。
結局、遠回りしてさまざまな職業を経験しながら、自分の目指すべき道がはっきり見えてきました。
コンクリートを作りたいという感覚より、昔から生活の中に当たり前にあった“木のもの”が作りたいんだ!と。

 

試作品が認められるときの瞬間は爽快!

将来を模索しながら、最後に行き着いたのは「木のものづくり」。消去法的なゴールではありましたが、木を手にしてものづくりを始めると、もう面白くて面白くて。新しいものの注文が来るたびに嬉しくて、とりあえずやってみる。作ってみる。どんどんどんどん注文が来て、作り続けました。
ありがたいことに今でも売れている商品がたくさんあります。パンのお盆作りは、僕が継いでから受注した仕事なんです。昔は肉用のお盆ばかり作っていましたからね。制作の多様性が増えた感じがあります。

仕事をして一番ワクワクするのは、試作品を出してOKをもらったときですね。試作品を出し終わった後に、「これはちょっと・・・」と言われるとガッカリしますし、「これいいですね!これでいきましょう!」という感じだと本当に高揚します。認められた瞬間は特に。

 

「柔らかいな」と感じさせるお盆を目指す

商品は精肉・惣菜向けやパン用などいろいろなお盆があります。特に肉芝をお盆に載せて、肉を置いていることが多いです。
製品として、洗いやすくするためにきつい角を作らない。塗装の時に隙間を作ったりしない。細菌が繁殖しない。とにかく滑らかに。
触った瞬間に「柔らかいな」って気持ちになることが個人的に目指しているところです。
実際の生の木ではなくて、塗料がのっているんですけど、柔らかい感触を感じてもらえるような。そういうものを目指しています。それに向けて、機械も増えてきましたし、工程も増えました。最初はサンダーと、もう1本丸いヤスリ程度しかなくて。今思うとよくこれでやっていたなって。今は工程だけでも18から20ほどあります。いい製品を作るために少しずつ増やしていってるところです。

 

暮らしの中に木の器、秋田杉のある日常を

好評のお盆の制作経験を通して、これからは食器をメインで作っていけたらいいな、と思っています。木製の皿などの食器類。どこのレストランに行っても木の皿が一つぐらいはありますよね。自分の作った皿で料理を食べられたら最高です。
この前も友人の家で飲み会があって、僕が作ったお盆にピザを載せて使ってくれました。嬉しかったんですよ。

07

木目で食べ物をみると面白いと思うんです。
寿司下駄のように、木を生かした食器文化は昔からある。こういう文化を違う形で継承していけたらいいですよね。
うちの製品を手にとってもらって、高級感云々よりも普段使いしてほしいんですよ。毎日の生活の一部になってほしくて。
20年ぐらい経ってから「これ修理できるか?」と持ってくるお客さんもいますし、そんな感じでガンガン使ってほしいんです。普段の生活の中で、五城目の秋田杉で作ったお盆が浸透されていけば、これ以上の喜びはないですね。

木工職人の佐藤さん(中央)を囲んでのインタビュー風景

 


《インタビューと文:五城目町地域おこし協力隊・柳澤龍》